「国際旅団」の伝説考 ジャック・ゴーシュロン 大島博光訳


  



原注* 一九九六年、「国際旅団」結成六〇周年を記念して、A.R.Tによって『自由への情熱』が刊行された。この本を入れる箱を、ボスリ・タスリッキーの石版画が飾り、それにこの詩が添えられた。

訳注 「名もない者のなかの名もない者」の革命への参加を主題として追求されたのが「国際旅団の伝説考」である。
 一九三六年、ファシスト・フランコによるスペイン共和国にたいする襲撃から、スペイン市民戦争が勃発した。フランコはヒットラーとムッソリーニの強力な支援をとりつけていた。 ファシズムの脅威に対抗するために「人民戦線」がつくられた。それは世界じゅうの人民の連帯を呼びさまし、スペイン人民を支援しようと、世界じゅうから「自由の義勇兵」たちがスペインにやってきて、 英雄的な「国際義勇旅団」が編成される。それは国際的連帯の模範として賛えられた。スペインの詩人ラファエル・アルベルティは歓迎と賞賛の詩を旅団にささげた。

 きみたちは遠くからやってきた・・・だがその遠さも
 国境を越えて歌うきみたちの血にとって何んだろう
 避けられぬ死が毎日きみたちを名ざすのだ
 町なかだろうと野っぱらだろうと路上だろうと お構いなしに

 こっちの国あっちの国から 大きな国小さな国から
 ほとんど地図の上に色もついていないような国から
 おんなじ根から生まれた おんなじ夢を抱いて
 素朴で名もないきみたちは 話しながらやってきた
(大島博光訳『マチャード/アルベルティ詩集』土曜美術社出版販売)

 こうして五〇〇〇人の義勇兵たちがスペインの大地にその骨を埋めたといわれる。そうして伝説が始まる。
 「素朴で名もない」その人たち、「何んにも持たないしがないその人たち」はやってきた。名誉も何んにも求めずに、その人たちはスペインにやってきて、その命を差し出した。 ──「それだけがただひとつの義務であるかのように」そしてその義務の名は国際的連帯というものである。

 ひとつの手がもうひとつの手と握りあえば
 絶望や不幸にたちむかう
 堅い城壁となる──
 こうしてその人たちは、狂暴な敵を相手に「きっぱりとした勇気」をみせて、スペインの大地に仆れた。
 その人たちの献身、勇気、死はけっしてむだではなかった。「はっきりと見とおしていた」その人たちの選択は正しかった。「未来はやがて/ああ 遅すぎたが/きみたちの正しかったことを認めた」のだ。
 人民の歴史はその人たちをけっして忘れないだろう。くりかえし伝説は語られるだろう。