燃えるパリ──放火犯人たち(抄)


  

放火犯人


  

 大蔵省が燃えているあいだにも火の手はさらに、いたるところから上った。 それらの火事は、連盟兵が敵をくいとめるために放ったものもあれば、敵がコミューン戦士の拠点をつぶすために放ったものもあり、 また砲撃によるものもあった。 この大火について、ヴェルサイユ軍は、石油女(ペロトルーズ)が石油をかけて火をつけてまわっている、というデマをでっちあげて、 パリの女たちにたいする憎悪をあおった。 瓶(ぴん)や水差しの類をもっていた女たちは、たちどころにひっとらえられた。 燃えるパリについて、リサガレは書いている。
「炎は、衰えたかと思うと、また勢いをもりかえして、無数の窓から、めらめらと燃えあがった。 セーヌ河の赤い波が、建物に照り映えて、火事はいっそうものものしく見えた。 ロワイヤル街から対岸のサン・シュルピス街までは、セーヌの流れをまたいで、火の壁となっている。 炎の渦は、パリの西部地区ぜんたいを蔽い、猛火からほとばしり出る炎の突風は、隣接の街区に火の粉の雨を降らせる。」
 詩人ヴェルメルシュは『放火犯人たち』のなかに歌う。