基本的なもののオード集     パブロ・ネルーダ 大島博光訳


  




 一九五四年から書かれる四巻の『基本的なもののオード集』においては、ネルーダは基本的なもの(エレメンテール)を、一般に元素(エレノント)と呼ばれているものに限定せずに、人間労働によってつくり出された生産品や、人間生活に必要なものにまで拡大している。こうしてかれは、セロリ、ぶどう酒、パン、レモン、月、猫、象、ピアノ・・・・をうたい、「正義」や「民主主義」をうたう。
 「テムコの自然は、強烈なウイスキーのようにわたしを酔わせた。やっと一〇歳になったばかりだったが、わたしはもう詩人だった。」
 こういうネルーダは、これらの『オード集』においても、自然、大地、人類との対話・交感をつづけ、生命、現実、物との情熱的な対話をとおして、あたらしい発見をとりだしているのである。(『愛と革命の詩人ネルーダ』)