「フランスの起床ラッパ」

   パリ


 

 ついに解放の希いはかなえられてパリは解放される。一九四四年八月二十四日、暑い夜の十一時ごろ、突然、狂ったようにノートル・ダムの大鐘が鳴り出した。それにこたえるように、 対岸のサン・ジェルヴェ寺院の鐘が鳴りだし、つづいてパリじゅうの鐘という鐘が鳴りだした。またたく星空の下、燈火のない暗いパリは夢のような歓喜の大合奏につつまれた。 市民は外に飛びだし、街や大通りを埋めた。─自由になったぞ! アラゴンは解放の歓びをつぎのように歌う。(新日本新書「アラゴン」)